Walther:P38 TOKYO MARUI

 ドイツを代表する銃器メーカーにワルサー社(Walther)がある。
 ワルサー社は1886年にドイツに生まれたカール・ワルサー(1858−1915)が、長男のフリッツ・ワルサー(1892−1966)と共に1886年に創業した老舗メーカーである。当初は狩猟用ライフルを生産していたが、ワルサー親子は当時主流であった回転式(リヴォルバー)拳銃ではなく、自動式拳銃(オートマチック)の開発に力を入れ、1908年に初の自動式拳銃を完成させるが、ドイツ海軍では1904年に、ドイツ陸軍では1908年にモーゼル社の自動式拳銃であるルガーP08を正式採用している。

 1914年から1918年にかけて行われた第一次世界大戦において敗戦国となったドイツは、ヴェルサイユ条約によって兵器の生産に関しても多くの制限が課される事となり、ワルサー社も経営危機に陥ったが、この条約に觝触しない自動拳銃の開発に着手。1929年にワルサー社発展の基礎となる中型拳銃 PP(Polizei Pistole)を発表し、更に銃身を短くした PPK(Polizei Pistole Kurz)を発表した。この銃の機構には当時としては先進的な物が多く、その後作られた自動式拳銃に大きな影響を与えている。

 第一次世界大戦時、ドイツ陸軍が制式ピストルとして採用していたのはルガーP08で、この銃は尺取り虫の動きの様な独特の排莢システムを持っていたにも関わらず、いかにもドイツ製品らしく命中精度も高く、非常に高性能であったという。しかし作りが精巧で生産コストが高い上、耐久性の面 で問題があったため、第二次世界大戦前にドイツ陸軍から『生産コストが安く、耐久性に優れた銃の開発』を依頼されたワルサー社が1934年頃から開発を進め、1938年にルガーP08に代ってドイツ軍の正式拳銃として採用されたのが、ワルサー社の P38 である。
 このワルサーP38は、口径9mmの弾丸をマガジンに8発納める事が出来、その機構はPPの流れを汲む先進的な物であったが、第二次世界大戦末期に製造されたモデルには、生産力の低下による粗悪品も多く、暴発なども多かったようである。

特徴的なスタイルは他の銃と見間違う事は無い?

安全装置も、撃鉄(ハンマー)も本体スライドと一体になっていて動かない。

 
 写真の P38 は、東京マルイ のエアコッキング式のエアガンである。
 現在日本で発売されているエアガンは、ボンベに注入したガスを利用して弾を発射する『ガスガン』と、スライド等を弾く事で空気を圧縮して、その力を利用して弾を発射する『エアコッキングガン』、そして充電式のバッテリーや乾電池を利用して機械的に弾を発射させる『電動ガン』の3種類に大別 (名称は各社様々である)される。また、その弾を発射する力の強さによって対象年齢が10才以上のモデルと、18才以上のモデルとに分けられる。

 モデルガンを集めていて、ふと「弾が出る銃も欲しい」という気になって、一番安価に入手可能な『エアコッキングガン』に手を出した。この P38 は、10才以上のモデルで定価が1,980円というお値段である。
 当然価格が10倍以上するモデルガンと違い、細かな部品が実銃通 りに再現されている訳では無いし、弾を飛ばすポンプ部が内蔵されているのだから、構造も大分違っている。勿論プラスチックなので軽いし、プラモデルに近いかもしれない。しかし、値段を考えれば当然と言えば当然であるし、逆にこの金額だからあまり躊躇無く色々と手を入れる事も出来る。
 そんな訳で、このP38は一度分解して、トイガンのカスタムを手掛けるキャロムショットの専用塗料(塗料の方が本体よりずっと高い)を使って、時間をかけて塗装を行っている。

 この銃も PPK も、第二次世界大戦中はヒトラー率いるナチス・ドイツのご用達銃として使用されているので、戦争映画を見ているとドイツ兵は大抵この P38 を手にしている。
 私がこの銃を最初に意識したのは、1960年代に放映されたアメリカのテレビドラマ『0011ナポレオン・ソロ(The Man From U.N.C.L.E.)』の主人公、ナポレオン・ソロとイリヤ・クリアキンが使っていたのを見てからである。
 世界の法と秩序を守る国際機関アンクル(U.N.C.L.E.=United Network Command for Law and Enforcement)のエージェントである主人公の使う銃がワルサーP38の改造銃で、通 常は銃身を切り詰めてサイレンサー(消音器)が装着してある。また狙撃等を行う時には消音機の前に長い銃身を取り付け、スコープや伸縮する金属製の銃床を取り付けたりするのがとても格好良かった。
 詳細はコチラをご覧下さい。

 しかし、日本では何と言ってもこの銃が有名なのはモンキー・パンチ氏の漫画(というかそれが原作のアニメ)『ルパン三世』の影響であろう。
 このアニメに関しては、今更何の説明も必要ないと思う。P38はルパンの愛銃である。そして何しろ主題歌(エンディング:ルパン三世)の中で『ワルサーピーさんじゅうはち〜』と名指しで歌われてしまっているのである。また、1997年にはTVスペシャルのシリーズ第9弾が放映されたが、そのタイトルが『ルパン三世 ワルサーP38』であった。
 映像の中ではそれ程銃を使わないルパン三世であるが、新作漫画『ルパン三世Y』の中では P38 では無く、同じワルサー社が1996年に開発した P99 を手にしている。またワルサーPPKを使う事で有名であった英国の情報部員ジェームス・ボンド『007』も、映画のシリーズでは銃を PPK から P99 に持ち替えてしまった。時代の流れとは言え少々寂しい気がする。

前のページに戻る